■結婚できるという幸せ 1:心斎橋マリーシンシア
ある日、針中野のドレスショールームの前で40才半ばのご婦人が、長い時間ドレスを見ておられました。
店長が「お嬢様のご婚礼ですか?」と声をかけたところ、ご婦人はイエイエと手を振って「娘は去年に亡くなりまして、今生きていれば、こんなきれいな衣裳を着る頃かナと思いまして」とポツンとおっしゃるのです。
お話しを伺ったところ、2年前に私どものお店で成人式衣裳をご利用なされた方のお母様だったのです。
2年前の正月明けのことでした。式典には参加しないが写真だけ記念に残したいので、衣裳と着付けそれに写真をお願いできないかという問い合わせのお電話を頂きました。
お母様からの問い合わせでしたが、本人は頭の髪がほとんど無いのでうまくかつらをつけてごまかしてほしいという事でした。
さて、撮影の日、お母様に連れてこられてご本人がいらっしゃったのですが、やはり脱毛がひどく、体は痩せこけて、いかにも病み上がりという感じを受けました。
「かつらをつけるだけでイイ」とご本人はおっしゃっていましたが、せっかくだからとメイクも少しほどこして、できるだけ健康的なイメージが出るように努めたのです。
「ワァきれい」とご本人は鏡に映ったご自分の姿を眺めて大変満足している様子でした。(つづく)
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